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ハナミズキ(エレリ)

先日の希望の翼で無料配布したお話です。

こちらは「翼舞う、ひとひらの羽根」の後日談のお話となります。


ハナミズキ




旧調査兵団本部の広い庭――
元貴族の別荘のせいか無駄に広い庭をたった一人で掃除をしろなどと言われても一日かけたって到底終わらない。
リヴァイがなぜそんな命令をしたのか、行き場のない怒りを持て余しているエレンの背後から買い出しから帰ってきたばかりのペトラが声をかけた。

「ねぇエレン、ここの生活にはもう慣れた?」
「あ……ペトラさん。はい、皆さんのおかげで何とか……」
「ウフフよかった……でもまだリヴァイ兵長のことは苦手みたいだよね?」
「え?えっと……そう見えますか?」

エレンの胸中は複雑だ。半年ほど前、訓練兵だったエレンは見学に来た調査兵団で初めて人類最強と噂されるリヴァイと出会った。
そこまでならただの憧れの存在で済んで終わったはずなのに、リヴァイへの好奇心から身の危険に遭遇し、あわや強姦されそうになったところをリヴァイが身代わりになったのだ。
しかもリヴァイはエレンが先に逃げ帰った後、強姦した男を恐らく殺している。本来殺人を犯せば憲兵団に捕まり、然るべき罪を償わなくてはならない。
リヴァイはそのことを誰かにバラせばエレンを殺すと脅しをかけてきたのだ。
エレンは元よりそんなつもりはなかった。エレン自身、リヴァイをいいように弄んだあの男を殺してやりたいと強く思っていたからだ。
そのとき同時に生まれたリヴァイに対する欲情――男が男を欲するなど最初は気が動転したのかと思うようにしていた。
だがあの日以降、エレンは脳裏に焼きつかれたリヴァイの表情を思い出しながら毎晩自慰行為をするようになっていた。
終わった後に沸き起こる虚しさともどかしさに哀しくなるばかり。エレンはリヴァイに対し、憧れ以上の恋心を抱いたのだということをようやく自覚したのだ。
一方のリヴァイはエレンのことをあくまで監視の対象としか見ていないようで、当然といえば当然なのだがとても告白するような甘い雰囲気などは一切ない。
それでも訳もわからず片腕だけ巨人化したエレンにいまにも襲いかかろうとするリヴァイ班を止めたり、巨人の体の中からエレンを救い出す方法を見出したり、所々で優しさを感じてしまうときがある。
傍にいればいるほど再会する前より気持ちがどんどん大きくなってしまったエレンはリヴァイを意識してするあまり、あからさまに避けるようになってしまったいた。
そんなエレンの態度がペトラたちにはリヴァイに対する苦手意識というようにとられてしまったのだろう。

「まぁ、確かにリヴァイ兵長は普段淡々としているし、掃除には人一倍厳しいし、紅茶の好みも実はうるさかったりするけど………:」
「あ、あのペトラさん……それちょっと言い過ぎじゃ……」

フッとペトラの瞳が誰かを愛しく想う光に揺れる。

「それでもリヴァイ兵長のことを悪く言う人は誰一人いないわ……皆あの人に憧れて一緒に戦いたいって思っているの。」
「ペトラさん……」

やはりペトラもエレンと同じ気持ちをリヴァイに抱いているのか……そしてそれはペトラだけではない。人類最強であるリヴァイに皆、憧れや尊敬の念を抱いているのだ。
その中でペトラのように恋心を抱いている者がいたっておかしくなはいと思うと、エレンの胸はこの上ないほど強く締めつけられた。

「あ……あれ……」

ふとペトラが庭のあさっての方に視線を向ける。そこ立つ一本の木が花を咲かせていた。

「そういえば、ここに来たばかりのときは花なんて咲いてなかったのに……」
「そっか、この木はハナミズキの木だったんだね。」
「ハナミズキ……?」
「エレンはこの花を見たことないの?」

エレンは視線を彷徨わせながら、申し訳なさそうに頭を掻いた。

「すみません。あんまりこういったのには興味がなくて……」
「ごめんごめん、エレンは男の子だもんね。興味がなくても仕方ないか……この花はね、いまくらいのちょうど温かくなる時期に咲かせるの。」
「へぇ……ペトラさんは花に詳しいんですね。」
「まぁ一応、これでも女ですから。それに花には花言葉っていうのがあるんだよ。」
「花言葉?」

意味がわからず不思議そうに首を傾げるエレンに、ペトラはクスリと微笑んだ。

「うん。その花を象徴するような言葉がそれぞれつけられるのが花言葉っていうのよ。」
「じゃぁ。このハナミズキはどんな花言葉なんですか?」

エレンが聞くと、ペトラの頬がほんのりと赤く染まったように見えた。

「ハナミズキの花言葉はね………」


  *   *   *


「あれは………」

エレンがふと視線を向けた先にある木にどこか見覚えがある花が咲いているのが見えて乗っていた馬を止めると、前にいたリヴァイが振り向いた。

「どうした?エレン……」
「ちょっと寄り道していいですか?」
「別に構わないが……」

エレンはリヴァイの返事にニッコリと微笑み、馬を降りて木がある方へと向かう。段々近づいていくと木にはほんのり薄紅色をつけた花がいくつも咲いていた。

「やっぱり……ハナミズキだ。」
「ハナミズキ?」
「旧調査兵団本部の庭にも咲いていたんです。昔ペトラさんに教えてもらいました。」
「あぁ……この花か……」
「リヴァイ兵長、知ってるんですか?」
「お前、よくこの花の前で立っていただろう?」
「え………?リヴァイ兵長、よく知っていますね。」

旧調査兵団本部にいた頃はエレンがリヴァイのことを意識しすぎてあからさまに避けていた頃だったので、まさかリヴァイに目撃されていたとは思っても見なかった。

「お前はいつもこの花に語りかけているように見えたからな。何をしているのか気にはなっていた。」
「あ……えっと、すみません。」
「何だ?俺には言えないことか?」

途端に不機嫌そうな顔になる。最近になって思うのだが二人の想いを通わせてからというもの、リヴァイの表情の変化が以前よりわかるようになってきた。
それもエレンに対してリヴァイが心を開いているからなのだろう。エレンはあえてリヴァイ本人にそのことを口にはしていないのだが……

「そんなこと全然ありませんよ。それよりリヴァイ兵長、ハナミズキの花言葉知っていますか?」
「花言葉……?んなもん、俺が知っていると思うのか?」
「ハハハ……そうですよね。俺だってペトラさんに教えてもらって初めて知りましたから。」

エレンはそう言いながら、あらためて木に咲く花を見上げた。山から吹き抜ける爽やかな風が通り抜けて木の枝を揺らしているのに目を細める。

「ハナミズキの花言葉は【私の思いを受けてください】っていうんですって。あの時のオレはリヴァイ兵長に自分の気持ちが届きますようにっていつもこの花に願っていたんです。」

誰にも言えず持て余していたリヴァイへの想い。ペトラから花言葉の意味を教えてもらってからというもの、エレンは
ずっとハナミズキに心の中で願い続けていたのだ。

「すみません、リヴァイ兵長。オレ、やっぱり変ですよね。」

頭を掻きながら照れるエレンに、リヴァイは静かに首を横に振りながら近づいてきた。

「いや……お前らしくて俺は別に嫌いではない。」

リヴァイの額がコツンとエレンの肩に優しく当たる。こうするときはリヴァイが自分に甘えてきているようだ。
すべて言葉にしなくても伝わる想いもあるということをエレンは知ることができた。
エレンが生まれて初めて愛したのがリヴァイであって、リヴァイへの想いがあったからこそエレンは自分の中にいたもう一人の自分の狂気に打ち勝つことができた。
エレンは溢れる愛しさと温かさを感じながらリヴァイの背に腕を回した。

「あの……リヴァイ兵長。」
「何だ?」
「とてもいまさらな気もするんですが、リヴァイ兵長はいつからオレのことを好きでいてくれたんですか?」
「―――何でそんなことを知りたがる?」
「あ……オレ、ずっと兵長に嫌われているのかなって、あの頃は特にそう思っていたので……」

リヴァイはエレンの肩に額を当てて顔を伏せたまま、しばらくの間黙っていたが、再び爽やかな風が二人を包み込むとようやくその口を開いた。

「いつからっていうのは俺にも正直わからねぇな……ただ、お前が初めて調査兵団に来たときから俺はお前のその強い眼差しがずっと気になっていた。」
「オレの……?」
「それが好きなのかどうかなんてことすらさえわからなかった。何せ人を好きになるのはお前が初めてだったからな。」
「え―――?あ。あの……リヴァイ兵長。」
「―――いい加減、その呼び方はやめろ。オレはもう兵長なんかじゃねぇ……」

リヴァイとエレンが壁の外に出てまもなく三か月になろうとしていた。エレンはいまだにリヴァイの呼び方に悩んでいいたのだ。

「―――すみません、何て呼べばいいのか……」
「別に普通に名前で呼べばいいじゃねぇか。」

リヴァイがようやく顔を起こし、エレンをジッと見つめてくる。その表情があまりに扇情的だったので、エレンの胸はドクンと大きく高鳴りながら、いまにでもリヴァイを抱きしめたい気持ちに染められていく。
エレンはリヴァイの背中に回す腕に力を籠めながら、ほんのり赤く染まっているように見える耳に優しく囁いた。

「じゃぁ……リヴァイ、さん……」

リヴァイは再びエレンの肩に額を当て、顔を隠してしまう。
エレンの腕の中にいるリヴァイの体温が上昇しているように感じた。

「――――悪くねぇな……」

エレンに聞こえるか聞こえないかという小さな声でポツリとリヴァイが呟く。
恐らく照れているのだろう。さっきより一段と耳が赤くなっているのが今度ははっきりとわかった。

『もう…何でこんなに可愛いんだ、この人は!』

リヴァイ自身は無自覚なのだろうが、無自覚ほど恐ろしいものはない。想いが通じ、こうして一緒に過ごすようになってからというもの、エレンは時々リヴァイに対して可愛いと思ってしまうときがあるのだ。
十歳以上も歳上の元上司。いまは恋人同士とはいえ、可愛いなんて言葉は思っていてもまだ一度も口にはしていない。
理性を騒動員して抑えていたリヴァイへの欲求が爆発寸前のところまで来ていた。

「あ……あの、キスしてもいいですか?」
「……嫌だ、と言ったら?」
「しませんよ。リヴァイ兵長が嫌がることはもうしたくないです。」

エレンは申し訳なさそうに目を伏せる。理性を失って初めてリヴァイを無理矢理抱いたときのことを思い出した。

「意地悪な言い方をしたな。別にあのときも本気で嫌だったらどうにでもできた……だが、俺はあえてそうしなかった。」
「え………」
「俺もお前のことが欲しかったんだよ。お前が俺に飲ませた薬のせいでも何でもねぇ……それだけは確かだ。」

驚くエレンをよそにあっという間に縮まる距離。柔らかく触れるリヴァイの唇は甘い熱でエレンの心を一瞬で溶かしていった。

『ダメだ……もっと欲しくなる……』

毎日のように触れれば触れるほどリヴァイのことを貪欲に求めてしまってどうにも歯止めが効かない。
互いの舌を絡ませる度に二人の唾液がクチュクチュと卑猥な水音を立てながら混ざり合う。
ここが外だということを忘れて、エレンとリヴァイは互いを貪る。息が苦しくなり、名残惜しいと思いながらエレンは唇を離し、深い溜息をついた。

「もう……リヴァイさんがオレを煽ったんですからね。今夜は覚悟してください。」

リヴァイは口の端をニヤリと上げた。

「今夜も……の間違いじゃねぇのか?底なしのてめぇに付き合わされるこっちの身がもたねぇ。」
「仕方ないじゃないですか。リヴァイさんのことが好きなんですから。本当は毎日だって物足りないくらいです。」
「……やっぱり俺はお前には敵わねぇようだな……」

リヴァイはエレンの腕の中をスルリと抜け出し、風でゆらゆらと揺れるハナミズキをもう一度見上げた。

「リヴァイさん……?」
「お前の願いは叶ったわけだな……」

横に並んだエレンの指にリヴァイは自分の指を絡めませた。
リヴァイの優しい温もりにエレンの胸は幸せいっぱいに満ちていく。
エレンはリヴァイの手をそっと強く握った。

「はい……いまではハナミズキの花言葉の意味を教えてくれたペトラさんに感謝しています。」
「あぁ……そうだな。俺も感謝している。」

それから二人はしばらくの間、言葉を交わすことなく互いの想いを馳せながらハナミズキを見上げていた。

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