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至高の刃新刊「Sweet Memories vol.1」サンプル

12/25の兵長中心オンリー「至高の刃」の新刊サンプルです!
新刊は以前出したリーマン×半人半獣猫のハッピーラブストーリー
「Peach & Milk Tea」の短編集です!
Peach~をお持ちでない方でもお読みいただけます♪
目にいれても痛くない可愛さ満載のチビエレにゃんからリヴァイさんにたっぷり愛されて
美猫になった大人エレにゃんの幸せなお話をお楽しみください!

Sweet Memories vol.1
A5/72P/700円/口絵付き/R18
表紙はレース加工の特殊装丁です。サンプルは仮となります。
表紙1000


【収録】
・プロローグ
・涙雨が止んだ後には
 →チビエレにゃんが注射が嫌いで家出してしまうお話。
・無自覚な小悪魔(Pixiv再録)
 →エレにゃんがリヴァイさんの家に来て間もない頃、ヤキモチを妬いてしまうお話。
・永遠の魔法に魅せられて(壁博11無配)
 →リヴァイさんの家でハロウィンパーティーをするお話。お互い恋を意識し始めた頃。
・思い出重ねて
 →エレにゃんが大人になってから、愛を育むベッドを買い替えるためにショールームを訪れるお話。
・Happy Kiss with you(Pixiv再録)
 →リヴァイさんが出張でエレにゃんが一人留守番をするお話。
・あなたが生まれた日
 →リヴァイさんの誕生日をエレにゃんがお祝いするお話。


とらのあな→コチラ

イベント頒布のみ素敵なノベルティが付きます!マイ愛方・艾田蓬子描き下ろしのベビーエレにゃんバッグです。(無くなり次第終了)
バッグ

また、今回「Peach&Milk Tea」も再販します♪サンプル→コチラ

サンプルはプロローグ全編です。こちらはPeach & Milk Teaをお持ちでない方に二人の関係がわかりやすいように振り返るお話となっています。


プロローグ


「んっ―――」

 肌に刺すようなヒヤリとした空気を感知すると、全身がブルリと震え出す。尻尾の根元から先っぽにかけ、毛を逆立てながらエレンは目を醒ました。部屋が薄暗いということはまだ夜が明けていない時間なのだと教えてくれる。黄金色の大きな瞳にはっきりと映し出されたのは愛しいリヴァイの無防備な寝顔。すぅっという穏やかな寝息は、ぐっすりと眠っている証拠だ。ここ最近、仕事で疲れているようだったらからもう少し眠らせてあげたい。

「リヴァイさんてば、可愛い……」

 自然と微笑みが零れてしまう。仕事で何人もの部下を抱えている彼は普段、滅多に表情を崩すことはないという。

「エレンの前ではリヴァイ課長もいろんな顔を見せるのね。」

 リヴァイの部下であるペトラが話していたのを思い出す。家にいるときとそんなに違いがあるのかと心配になってしまう。そんなリヴァイはほんの数時間前までエレンの心と体を貪る獣と化していた。
 体の中にまだ熱の痕が残っている。それだけリヴァイに愛されているのだと全身全霊で感じる。幸せすぎていまは怖いくらいだ。
 半人半獣の貴重種猫――ペットブームの中、遺伝子改良によって生まれた貴重種。猫の耳、尻から生えた尻尾、八重歯のような牙がある以外は見かけ人間とまったく変わらない。生まれて一年で人間でいう十五歳の青少年の姿まで成長して以降は、寿命もほとんど変わらない。繁殖が難しいため当初は高所得層のペットとして飼われるのが主だった。しかし、その特性がゆえに飼いづらい点もあるのは否めない。
 体が急成長することで知能の発達が追いつかず、物覚えと手先の起用さは時間がかかることが難点と言われている。しかし、リヴァイの友人であり、同じ貴重種猫と暮らしているハンジやペトラの多大なる協力で、エレンは掃除や洗濯、料理など家事を一通りこなせるようになっていた。
 さらに年二回程度、発情期といっていわゆる性的本能が活発になる時期があるが、いまは薬剤注射によって抑制することができるようになった。貴重種猫と人間が一緒に暮らしやすいようにと、いまでも日々、進歩しているのはエレンにとってありがたいことだ。
 それでも人間にとっての貴重種猫は所詮【ペット】に過ぎない。家族として大切にしてくれるのは変わらないが、生涯のパートナーとなれるかどうかということになると、やはり異種間という壁に阻まれてしまう。初めての発情期が来たときに自覚してしまったリヴァイへの想いはずっと本人へ伝えることは決してないのだと心に留めておくことにしたのに――
 一度は決まった飼い主候補に幼かったエレンを引き渡さず、所有の証である首輪をくれただけでもう十分だったはずなのに――
 エレンはそっと上半身を起こす。チリンと首輪の鈴が綺麗な音を鳴らしたので振り返ったが、リヴァイは相変わらず安らかな寝息をたてていたのでホッと安堵する。

「あれ……もしかしてリヴァイさん。オレが眠った後に……」

 昨晩の情事の後、力尽きてそのまま意識を落としたのに体が綺麗になっている。リヴァイの優しさに感謝しながらサラリとした細い黒髪をそっと撫で、指先に絡めた。

「あのとき、リヴァイさんに出会わなかったらオレはあのまま死んでいたんだろうな……」

  *    *    *

 エレンはリヴァイの家に来る以前の記憶はほとんど残っていない。生まれたばかり、まだ物心がつく前にたった一度だけ、母親らしき存在に抱かれた温もりが残っていたくらい。
 あとはリヴァイではない、悪意ある人間に酷い仕打ちをされたトラウマを抱えていたことくらいか。なぜあの場所で、いまにもつぶれそうな段ボールの中で強い雨に打たれていたのかわからない。
 世界が真っ暗だったということ、幸せを感じる間もなくこの命を終えるのだろうという虚無感を抱きながらもエレンはずっと呼び続けていた。母親でもなく、前の飼い主でもなく、自分の声にならない声を受け止めてくれる誰かを――
 エレンの目の前を通る者はこちらを見ることもなく足早に通りすぎていく。途中、車が水たまりを跳ね上げ、エレンは汚い泥水を頭からまともに被ってしまった。

「けほっ、……けほっ……」

 最悪なことに泥水が口と鼻にまで入ってしまったようだ。苦しい、まずい、寒い――体がブルブルと震える。もはや手の感覚もない。誰にも届かない、誰も見てくれない。
 あぁ、そうかと思う。

――オレは、いらないんだ……

 最初から生まれてこなくてもよかったのだ。誰にも必要とされない。仮にいなくなっても、誰も悲しみはしない。土砂降りの雨に打たれながら目からはボロボロと涙が零れ落ちていった。

――やだ……やだよぉ……だれかっ……

 オレを必要としてほしい……泣き叫ぶが体が冷え切ってしまい、思うように動けなくなってきた。
 もう、このまま死ぬのか……まぶたが重くなってきたエレンの耳に、パシャンと水溜まりを蹴るような足音が聞こえた。

――だ、れ……

 見上げると一見怖そうな印象をした男がこちらへ歩いてきた。エレンは一瞬怯んでしまうがこれが最後のチャンス。だが、いままでここを通りすぎた者たちと同じ、どうせ自分のことなど見てもくれないかもしれない。

――でも、オレは……

 諦めていたのに、口からは細々とした声で泣いている。無意識なのだが、どうせ雨の音にかき消されてしまうだろう。だが、男の目がエレンを捕らえた。
 深い色をしたグレーの瞳がこっちをジーっと見つめている。エレンも男の瞳に吸い寄せられるように見つめ返した。一瞬、男の歩くスピードが遅くなったが、止まることはなくエレンの前を通りすぎたところで視線をフイと外してしまう。ドクンと胸が熱くなった。

――やだ……おねがい、……オレを!

 男の背中をエレンは追いかける。

――みすてないで

 胸の内で叫んだのか、本当に声を出したのかエレン自信にもよくわからない。だが、エレンの声はどうやら男に届いていたようだった。
 男の足がピタリと止まり、こちらを振り返る。次第にエレンの目が熱くなっていくのはうれしいのか、悲しいのか、どの感情によるものなのだろうか……

「お前か?いま俺を呼んだのは……」
「ニャー……」

 最後の力を振り絞ってエレンは男に訴えかける。だが、小さな体は早々に限界を迎えていた。男と話しているうちに、意識が遠のいていく。あぁ、何もかも遅かった。もう自分は死ぬのだと悟る。

――いちどだけでいいから、だれかにだきしめてもらいたかった…

 その時、フワリとした温もりがエレンを包みこむ。もしかしてさっきの男?瞼を開けたいのに鉛のように重くて開けられない。エレンはそのまま眠りに落ちていった。


 もうダメだと思っていた命が助かり、人間の姿を目にした瞬間に咄嗟の防衛本能が働いた。怖い、近づくな、触るな――エレンは自分を助けてくれたリヴァイのすべてを否定した。この人間もいつか自分に酷い仕打ちをするのだ。だから決して心を許してはいけないのだと……
 尻尾や耳を逆立て敵意を剥き出しにするエレン。そのためかリヴァイは必要以上にエレンに接触することは避け、適度に距離を取ってくれた。油断はできなかったが、少なくともリヴァイに悪意がないことはすぐに察することができた。

『もしかして……あいつは……てきじゃない?』

 朝と夜、リヴァイが用意してくれるご飯は貴重種の子猫用のものらしく、味もバラエティーに富んでいてどれも美味しい。臭くて、ざらざらするものが入っていた泥水とは違って「ミルク」という白い飲み物を飲むとどこかホッとする。

『なんでオレにやさしくしてくれるんだろう?』

 でもいつ豹変するのかわからない。もしかしたらエレンを油断させる作戦なのかもしれない。そうだ、自分以外誰も信じられるものか――信じられるわけがない。

「よかったな、ここにいるのもあと数日で済む。」

 ハンネスとの電話を終えたリヴァイにそう言われたとき、小さな胸に針のような穴が開いた気がした。

「お前は数日後、新しい家に行ける。そこでなら幸せになれるはずだ。」

 よかったなと言って頭を撫でてくれる。人間なんか信用できない、そう思っていたのに――リヴァイだけは何かが、違う。

『なんで、こんなにもむねがくるしいの……?』

 意味がわからない、誰か教えてほしい。リヴァイに言ったらどう答えてくれるのだろうか――しかし、結局エレンは聞き出すことはできなかった。
 いよいよ里親との面会を明後日に控えたある夜、普段と変わらない食事をした後、リヴァイはエレンをお風呂にいれてくれた。お風呂なんてもの自体初めてで、大きな箱の中にアツアツのお湯が入っていて湯気が立っている。服を強引に脱がされ、真っ裸になったエレンは怖くて怖くてリヴァイの腕やらあちこちをひっかくほどに抵抗してしまった。
 しかしリヴァイは嫌な顔一つせず、エレンの体の隅々まで洗ってくれた。今度はドライヤーの音と熱風が嫌いで、大声を出して暴れたが、風邪を引かすわけにはいかないとリヴァイはさらに手を傷だらけにしつつも濡れた髪を乾かしてくれた。

「よし、綺麗になったな……」
「………」

 フワフワになった髪をクシャリと撫でてくれる大きな手に、心が軽くなっていく。それなのに胸が苦しくなる。エレンはリヴァイの顔を見るのがつらくてずっと俯いていた。

『オレは……このひとのそばにいたい……のか?』

 いまさらになって気づくが、もはや手遅れ。明後日になればリヴァイとはお別れだ。その日の夜もエレンは寝ぼけたフリをしてリヴァイのベッドに潜り込む。小さな体を包みこんでくれる温かさは初めて出会ったときと依然変わることはない。
 一緒にいたいと言ったら、離れたくないと言ったら、リヴァイはどう答えてくれるのだろうか?だがいまのエレンは大きな一歩を踏み出す勇気の欠片さえも失っていた。
 チリン――
 仕事から帰ってきたリヴァイがエレンの首につけたものから、聞いたことのない美しい音色が響く。丸くて、エレンの瞳と同じ色をしたそれはチリンチリンと音を奏でていた。

『これは――?』

 明日にはお別れだというのになぜ?――これをつけるとき、リヴァイは嫌なら抵抗していいと何度も確認してきた。逃げ道を用意してくれる優しさ――逃げるはずもなかった。 
 見上げると、多少頬を赤らめながらも、まっすぐに吸い込まれそうなリヴァイの瞳がいまにも泣き出しそうなエレンを照らし出していた。

「いいの――?」
「何がだ?」

 自分の言葉を紡ぐと、リヴァイの優しい声が振り落ちてくる。

「オレ……ここにいてもいいの?」

 小さくていまにも消えそうな勇気を振り絞り、ずっと喉につかえていた願いを疑問としてリヴァイにぶつける。するとリヴァイは両手を広げた。

「まだわからねぇのか?お前と一緒にいたいから、俺は自分で選んだ首輪をつけたんだぞ?」

 リヴァイの言葉一つ一つが心に浸透していき、胸がどっと溢れ返る。リヴァイの顔をもっと見ていたいのに、涙が滲んでぼやけてしまう。気がつけば、胸に飛び込んでいた。

「りばいさん―――!」

 リヴァイが一緒にいたいと言ってくれた。もう他のところに行くなんて嫌だ。

「お前がここにいたいのならいくらでもいればいい。俺はお前を絶対に裏切ったりしねぇよ。約束する、エレン。」

 エレン――リヴァイがつけてくれた名前。あの雨の夜に出会ったときから、エレンは無意識にリヴァイを求め続けていたのだといまになってわかる。
 チリンチリン――右に、左に、ちょっと動くだけで軽やかな鈴の音が鼓膜を揺らす。獣の耳の先をピクピクとさせ、エレンは小さな体を床にゴロゴロとさせながらわざと鈴を鳴らしていた。

「あぁ……あの子猫は俺が引き取ることにした。せっかく里親を探してくれたのに、直前になってすまない。」

 リヴァイがハンネスに断りの電話を入れているのが聞こえ、自然と頬が緩んでしまう。

『りばいさんがここにいていいっていってくれた!』

 窓からは明るい太陽の光が差し込む部屋。フカフカで肌ざわりのいい絨毯。今日からここが正式にエレンが住む家となった。
 欲しいものを手に入れることができた――


  *    *    *


 時の流れというものは早いものだ。リヴァイの前髪の毛先で遊んでいたエレンの左手の薬指にはリヴァイと同じ指輪がつけられている。あの雨の夜、二人が出会った日をエレンの誕生日としてくれたリヴァイから贈られた、生涯のパートナーとしての証。
 本当に受け取っていいものかと躊躇いがなかったわけではない。大好きなリヴァイには幸せでいてほしかった。たとえ、それが自分でなくても構わない。ただ、リヴァイの傍にいることができればそれでいいと無理矢理思いこんでいた。

「リヴァイさん……大好き……」

 出会ってからもいろんなことがあった。喜んだり、悲しんだり、時には怒ったり、迷ったり――エレンだけじゃない。リヴァイにだってエレン以上に迷いがあったはずだ。
 リヴァイなら幸せになれる選択肢がたくさんあったはずなのに、エレンを生涯たった一人のパートナーとして選んでくれた。
 いつも胸がぽかぽか、満たされている。空になりそうになってもいつもリヴァイが愛情を注いでくれる。
 だから自分もリヴァイをもっともっと幸せにしたい。「エレンを選んでよかった」と思ってもらえるように――

「さっきから何ニヤニヤしているんだ?エレン――」

 寝ていたはずのリヴァイがいつのまにかニッと笑みを浮かべながらエレンを見上げている。エレンは顔を真っ赤に染め、頬を風船のようにプゥっと膨らませた。

「もう……寝たフリするなんて……一体いつから起きていたんですか?」

 わざと拗ねた顔をしてもリヴァイにはお見通しのようで、クスリと笑みを零しながらエレンの左手にキスを落とした。

「俺のことが大好きってあたりだな……」

 独り言のつもりだったが、いまさらながらに恥ずかしくなる。

「リヴァイさんの意地悪…………好きだけど……」
「俺は愛しているぞ、エレン――」

 そう言いながらエレン腰に両腕を巻きつけてくるリヴァイ。まったく、いつまで寝ぼけているんですかと言ってやりたい。

「リヴァイさんと出会ったときのこと、思い出していたんです。まだたった一年半だけど、本当にいろいろなことがあって……」

 そう、この人と出会わなければいまの自分はいなかった――
 エレンは愛おしげにリヴァイを見つめる。

「そうだな……」

 たった短い言葉だけれど、リヴァイのいろんな想いが詰まっているように聞こえた。
 まだ明け方まで早いと、リヴァイが目線で催促する。起きてしまったのですっかり冷えた体をエレンはリヴァイに温めてもらうことにした。
 互いの温もりを感じながら、二人は思い出す。

 それはまるで、映画のワンシーンのように……


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