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夏コミ新刊②「幻を追いかけて」サンプル

夏コミ新刊二冊目のご紹介です。


8/15 COMICMARKET88 西め-07b
8/23 SUPERCOMICCITY関西21 6号館Cと-52a
Mikeneco Cafe

夏コミ新刊二冊目もエレン女装本(笑)
リヴァイP×エレりんです。
リヴァイさん過去にNoNameボーカル経歴有。


リヴァイ×エレン小説R18
幻を追いかけて
A5/44P/400円
表紙400


【あらすじ】
 幼い頃に解散したNoNameのボーカル・Lに憧れを抱き、自分もバンドデビューしたいと夢見ていたエレンは、ふとしたきっかけでNoNameが所属していた事務所のリヴァイと出会い、「このままだとデビューできない」と言われた上、無理矢理体を奪われてしまう。
 もう二度とリヴァイとは会うことはないと思っていたが、社長のエルヴィンから誘いを受け、半ば騙された形で女装アイドルオーディションを受け、その一年後、リヴァイの厳しいプロデュースのもとエレりんとしてトップアイドルとなる。
 しかし、いまだロックバンドの夢を捨てきれないエレンにはどうしても歌いたいNoNameの曲があった。
 ある日、リヴァイがその曲をリメイクすることを聞き、淡い期待を抱いたものの、リヴァイにこの曲を歌うのはエレンではないと言われてしまい……
 リヴァイ→→←←エレンの両片想い的な要素である上、リヴァイPが多少鬼畜気味ですが最後はハッピーエンドとなっています。


エレンが憧れていたNoNameリヴァイさんを艾田蓬子さん に描いていただきましたー!こちらは口絵となる上、イベント限定にて生写真をノベルティとしてお付けします♪
kuchie400.jpg

イベント・通販ともに頒布終了しました。 

サンプルはR18要素があります。閲覧は自己責任でお願いします。

 幼い頃、母親が大好きだったバンドのライブDVDをよく見ていた。そのせいなのか覚えていないのだけれど、おもちゃのマイクを持ってボーカルのモノマネをよくやっていたらしい。
 それがNoNameという幻のロックバンドだというのを知ったのは小学生になってからだ。
 NoName――突如ロック界に現れたカリスマ。ボーカルのL、ギターのH、ベースのMの覆面ロックバンド。
 三人とも目を包帯で隠し、顔はわからないがその音楽と歌声に当時の若者誰もが憧れ、熱狂した。
 次々と出すCDはミリオンセラーを叩き出し、ライブのチケットは発売わずか数分で完売、音楽界のあらゆる賞を総ナメにした。
 だが彗星のように現れた彼らはその年の年末の音楽番組を最後に突如姿を消してしまったのだ。
 NoNameは幻のロックバンドとして語り継がれている……


*       *         *


 暗闇に包まれた広い空間――
 中央のステージにスポットライトが照らさせると歓声が一気に沸き起こる。
 やがて静かなテンポで前奏が流れ出す。漂う色とりどりの光の海に浮かびあがるようにして、いまや他者の追随を許さないトップアイドルが姿を現した。

「エレりんサマーライブツアー最終日!みんなーー!今日は盛り上がっていこうぜーーー!」
「「「「エーレーりーーーーん!」」」」

 地響きのようにどっと歓声が会場中に沸き起こる。初のライブツアー最終日ということもあって、観客も、そしてエレりん自身のテンションもその日最高潮に達した。


 女装アイドル・エレりんことエレン・イェーガーは一年前、華々しくデビューし、たちまち注目を浴びた。
 ただ単に男が女装しているだけなら、ここまで爆発的な人気までには至らなかったかもしれない。しかし、大人として成熟していない中性的な顔立ちと発展途上である体つきは、立派な男であるはずなのに、一瞬女と見間違うほど。でも言葉使いを男そのものであり、媚びるような女言葉は一切使わない。
 そんな外見と内面のギャップが主に同年代の男女を惹きつけ、デビューから爆発的人気を呼び起こし、いまは他のアイドルの追随を許さないほどだ。
 エレりんが登場するイベントはどっと人が押し寄せ、ファンクラブの会員数もうなぎ上り。十年に一度現れるかどうかの逸材として、いまや国内だけでなく海外のメディアからも注目され始めていた。


 二度のアンコールも終了したものの、まだ会場内の熱気は冷めやらない。舞台袖に戻ったエレンをマネージャーのぺトラが迎えてくれた。

「お疲れさま!エレン。」
「あの…ぺトラさん、もう一回アンコール行きたいんですけど…」
「え?何言ってるの?アンコールは二回で終わる予定だったでしょ?それにバンドメンバーはもうとっくに控室に戻ってるわよ。」

 確かに観客席は室内灯が点され、ライブ終了のアナウンスが流れ始めていた。だが、観客は余韻に浸っているのかなかなか帰ろうとしていなかった。

「皆、まだ帰ろうとしていません。オレが出てくるのを待ってるんです。オレは自分を求めてくれるファンの声に応えたい。お願いです、ぺトラさん。オレ一人だけでも行かせてください。」

 でも……と困った表情を浮かべるペトラに、エレンは頭を九十度下げた。

「お前一人の我儘で他に迷惑をかけるわけにいかねぇんだよ。いい加減そのへんを自覚しろ。」
「リ…リヴァイP!いつ、こちらに?」

 ぺトラが驚いた声を上げる。リヴァイの名前を耳にし、動揺したエレンの肩が激しく揺れてしまった。

「リヴァイP……」

 無意識に顔を引き攣らせながらエレンはリヴァイを大きな瞳でキッと睨みつけた。

「そもそもお前があいつらを限られた時間で満足させてやらねぇからこういうことになるんだ。」
「リ……リヴァイP、それはいくら何でも……一万人以上も集まるこの会場でエレりんがライブするのは初めてのことですし……」
「ぺトラ、アイドルが輝くのは一瞬にすぎないのはお前だってわかっているはずだ。次、なんて保証はどこにもねぇんだよ。」
「それは……そうですが……」

 エレンに対して特に厳しいと言いたいのだろう。リヴァイにピシャリと切り捨てられ、ぺトラは言葉を呑み込みながら心配そうにエレンをチラリと見つめた。ぺトラにまで気を使わせてしまう自分が情けなく思えてきた。

「それくらいわかってますよ!だからこそ今度できちんと終わらせたいんです。お願いします、もう一度だけチャンスをください!」

 力不足だと真正面から指摘されただけで頭に血が上ってしまうのは、相手がリヴァイだからだろう。
 エレンがトップアイドルまで昇り詰めることができたのは、自分の力だけではないことは身に染みてわかっている。エレンに対し、厳しい言葉をぶつけるこの人物がいなければ、デビューどころかオーディションでさえまともに受けることができなかっただろう。
 この世界はただ憧れというだけでそう簡単にデビューなどできるはずもなく、次々と脱落していく者を目にしてきた。理解しているはずなのに、本来は感謝しなければならないリヴァイのことをそう簡単には認めたくない理由がエレンにはあった。
 唇をキュッと噛みしめ、悔しそうな顔を露わにしながらも強いまなざしで見つめてくるエレンに、リヴァイは大きな溜息をついた。

「十分間だけ猶予をやる。それまでに切り上げねぇと、会場やスタッフ、近隣の関係者にまで迷惑をかけることになっちまう……わかってるな?エレン。」
「はい、もちろんです。」

 何だかんだ言われつつ、リヴァイのおかげでもう一度チャンスをもらえたというのに、素直に喜ぶことができないエレンはファンが待つステージへ向かおうと一歩踏み出したところで足を止めた。

「リヴァイP……」
「何だ?」
「―――ありがとうございます。」

 結局、リヴァイの顔を見ることなく、ただ感謝の言葉だけを述べ、エレンはこの日最後のステージに立った。

『何だろう……胸が熱い……』

 微かな熱を持ちながらトクトクと静かに脈打つ左胸に掌を当てるエレンの脳裏に浮かぶのはリヴァイの顔。
 自分がまだまだ未熟だということをリヴァイに容赦なく突き付けられ、悔しい気持ちでいっぱいのはずなのに……エレンはリヴァイに対し、複雑な感情を抱いていることをこの日あらためて自覚させられる。

『きっかけがどうであれ、与えられたたチャンスは逃さない。オレはまだ夢を叶えていないんだ―――』

 ステージに姿を現すと再び会場内に歓声が沸いた。

「「「エーーーレりーーーーーん!」」」」
「みんなありがとう!これで本当に最後になるから、限界までオレに付き合ってくれーーー!」

 待っていたファンの声援に応え、エレンはアンコール曲を伴奏もなしに、アカペラで歌いながら最悪ともいえるリヴァイとの最初の出会いを思い出していた。


*       *         *


 一年前――

「だーーっ!もう付き合ってられるかよ!そこまで真面目になんか俺はできねぇ。あとは勝手やればいいだろ!」

 放課後の音楽室に怒号が響く。声の主であるジャンは周囲の心配をよそに怒りを露わにしていた。

「だから、ここをもっと丁寧に弾いてくれって言ってるだけだろ、ジャン。お前が難しいパートをさっきからごまかしているのがバレバレなんだよ!」

 負けじと応戦するエレンに図星をつかれ、ジャンはグッと言葉を詰まらせた。
 エレンが通うウォール・マリア学園はもうすぐ学園祭を控えている。その学園祭の目玉の一つとしてバンド大会が開催され、毎年多くのロックバンドが参加しているのだ。
 エレンはクラスメイトのミカサ、ジャン、アルミンたちとともにこの大会に参加すべくバンドを結成したのだが、もともと犬猿の仲であるジャンと事あるごとに対立していた。

「あー!もうこいつといると気分悪ぃ!俺はもう帰るっ!後は勝手にやってろ。」
「ちょ、ちょっと待ってよジャンってば!」

 皆を置いてさっさと出ていくジャンの背中を追いかけるアルミン。残されたメンバーは一同に深い溜息をついた。

「なぁエレン。ジャンの言うことも一理あると俺は思う。プロのオーディションを受けるわけでもないんだしさ、楽しく盛り上がれることができればそれでいいんじゃないのか?」

 コニーがエレンの顔色を窺う。残されたメンバーでミカサ以外はコニーと同じことを思っているようだ。

「わかったよ、所詮オレとお前たちとじゃ合わないってことだろ?」

 誰も答えられずどんよりとした重たい空気が流れていく。エレンはたまらずクルリと背を向け、ミカサが呼び止める声も無視して部屋から出ていった。

「はぁ……」

 気分転換に外の空気でも吸おうと校舎を出てみると、すっかり陽が暮れていて街の明かりが次々と点され始めていた。

『所詮、あいつらと求めているものが違うんだよな……』

 ジャンやコニーあたりからすれば、学園祭の一行事ごときに何を熱くなっているんだと言いたいのだろう。
 だがエレンは違う。本気でCDデビューしたいと夢見ている。
 小さい頃憧れたNoNameのボーカル、Lのように皆を熱くし、虜にする歌を歌いたい。そしてあのステージに立ちたい……エレンは鞄の中からかつての母からもらったLの生写真を取り出した。
 包帯の隙間からジッとこちらを見つめるLの瞳。素顔を隠した謎めいた魅力に多くのファンが惹きつけられた。エレンもこの年齢になってLの魅力を理解できるようになっていた。

「会ってみたいな……Lに……。」

 NoNameのDVDは周囲の皆が呆れるほど何度も何度も繰り返し見た。カラオケでもNoNameしか歌わないし、日々の発声練習も欠かさない。学校ではどの教科よりも音楽を勉強している。
 いまでも現役なら追いかけてしまうほどコアなファンになっていただろうと自負している。
 NoNameが解散してもう十年近くも経ったというのに、三人の正体は明かされていない。ネットではいまだ根強いファンによる検証サイトを立ち上がっていて、あれやこれやと憶測が飛び交っているようだがどれも真実性にかける。
 手が届かないもどかしさに溜息をつくエレンは、足元に何かが落ちているのを見つけた。

「これ……何だろう?財布?」

 どうやら女性物の財布のようだ。近くに交番がなかったかとキョロキョロしていると、背後からいきなりガシっと強い力で肩を掴まれ、驚きのあまりエレンの体は勢いよく飛び上がった。

「君……それ、私の財布なんだ………」

 振り返るとボサボサな髪の毛を後ろにまとめて眼鏡をかけた、一見男性にも見える女性が物凄い形相で立っていた。

「あ……ちょうどよかったです。交番に持っていこうかと思っていたところなんで……」
「え?あぁぁごめんごめん!持ち逃げでもされるかと思ってつい必死になっちゃった。」

 どうやら誤解は解けたらしい。大声でハハハと笑う女性は財布を受け取りながら、エレンが手にしていたLの生写真に大きな目をさらに見開いた。

「何、君?若いのにNoNameのファンなの?」
「はい。もともとは亡くなった母親の影響なんですけど……オレもいつかNoNameみたいに皆を惹きつけるような歌を歌いたいと思っているんです!」
「へぇ~十年前に解散したバンドにこんなに可愛いファンがいるとはね。あいつにも聞かせてやりたいな。」
「……あいつ?」

 誰のことを言っているのかわからず首を傾げるエレンに女性はニヤリと口の端を釣り上げた。

「ねぇ、君。実は私、ウォール・ミュージックの社員なんだ。」
「えっ!ウォール・ミュージック?」

 口から心臓が飛び出るかと思った。ウォール・ミュージックといえば言わずとしれたNoNameが所属していた会社だ。
 NoNameの突然の解散以降、他社に抜かれ低迷気味だったが数年前に現在の社長が就任してから、第二のNoName候補といわれる若手の有望株が売れ始めているのだとこの前テレビで特集されていた。

「フフフ……さすがNoNameのファンってことだけある。イイ反応するじゃない。この財布を拾ってくれたお礼に君を紹介してもいいんだけどな。」
「ほ、ほんとですか?」
「いまうちの事務所、君みたいな年齢の子を一から育ててデビューをさせているんだ。NoName目指している子ならなおさら大歓迎さ!」
「ありがとうございます!よろしくお願いしますっ。」

 まさに幸運とはこのことかもしれない。エレンは女性に深々と頭を下げた。

「言い忘れてたけど私はハンジ。えっと……」
「エレン・イェーガーです。」
「じゃぁエレン。早速来週の日曜日にウォール・ミュージック本社まで来て。よろしくね。」

 ハンジはエレンに連絡先を教え意気揚々に去っていった。


 ハンジと約束した日曜日。エレンは都心の一等地にあるウォール・ミュージック本社の正面玄関前に立っていた。

「エレン!お待たせ。迷わなかった?」
「ハンジさん。おはようございます。」
「じゃぁ早速こっちに来て。この前送ってもらった君の音源、うちのスタッフに聞いておいてもらったから。」
「スタッフですか……?」
「そう。私の同期なんだけどね。かなり無愛想な奴だけど、的を得た指摘をしてくれるから参考にするといい。」

 ハンジに連れられてきたのはスタジオルームが集まったフロア。さすがに休日ということもあって人の気配はまったく無かった。薄暗い廊下を進んでいった突き当りの部屋に辿り着く。
 防音仕様になっている扉をハンジが開けると、そこは以前音楽番組の特集で目にしたことのあるとても広いスタジオ。最新の音響設備もあってエレンは思わず感嘆の声を上げた。

「あぁ、リヴァイ。もう来ていたの?」

 ハンジが声をかけると、奥のソファに座りながら書類に目を通していたリヴァイという男性がチラリと視線だけをこちらに向けた。

「クソメガネが……人を休日出勤させやがって。」
「仕方ないでしょ、この子まだ高校生なんだから!じゃぁ後はよろしく!」
「え?ちょ、ちょっとハンジさん?」

 てっきり一緒にいてくれるものだと思っていたのに、ハンジはエレンの肩をポンっと叩いた後早々に出ていってしまう。
 リヴァイはあからさまに不機嫌そうな態度で書類を読み続けている。沈黙とともに何ともいえない重たい空気が流れていた。

『多分ハンジさんに無理矢理頼まれたんだろうな……』

 エレンは心の中で溜息をつきながら恐る恐るリヴァイの様子を窺う。年齢は二十代後半くらいだろうか。黒のネクタイにシックなスーツを着こなしている。スタッフと言っていたがアーティストの経験があるのかもしれない。だが、現役から引退するにはまだ若い気もした。

「あれ………?」

 目の前にいるリヴァイには今日初めて会ったはずなのに、なぜか胸の中に懐かしい、というような感情が沸き起こってきて思わず声を上げてしまう。
 それまで書類から少しも目を離さなかったリヴァイがようやくエレンの方を見た。

「―――何だ?」
「あ、すみません……変なことを聞きますけど、オレと以前どこかで会ったことありますか?」

 予想どおりリヴァイは怪訝そうな表情を浮かべた。

「―――さぁな。最近うちの会社にもお前と同じ年齢くらいのガキはたくさんいる。いちいち覚えていられるか。」
「そ、そうですよね……オレ、何言ってるんだろう……」

 おかしな質問をしたエレンに呆れたのか、ふぅっと長い溜息をついたリヴァイは手にしていた書類を机の上に置いた。

「事前に送ってもらったお前の音源を聞かせてもらった。一つ教えろ。なぜあの曲を選んだ?」
「え……?【幻を追いかけて】のことですか?」
「ハードロックが主体だったNoName唯一のバラード曲。そして最後にCD化されたやつだ。それまでとはまったく違う曲調にファンの間では賛否がわかれ、それが解散の原因になったとも言われている。いわくつきの曲だといってもいい。」

 さすがウォール・ミュージックのスタッフというところだろうか。NoNameについてやけに詳しいなとエレンは感心した。

「オレはそのとき五歳だったので後から知りました。」
「NoNameが好きだと言っている奴はこの曲を意識的に避ける傾向が多い。お前もNoNameの大ファンなんだろ?プロになれるかもしれないチャンスにあえてこれを選曲した理由は何だ?」

 リヴァイが興味深げに質問を投げかけてくる。エレンの脳裏には曲とともに母親の優しい笑顔が浮かんだ。

「亡くなった母が、この曲をとても好きだったんです。母もNoNameのファンでしたから……」
「お前確か、エレン・イェーガーっていったな?母親の名前は?」
「カルラ・イェーガーです。」

 一瞬、リヴァイの端正な瞳が大きく見開かれる。母のことを知っているのかと聞こうとしたが、話が逸れたと遮られてしまった。

「ハンジの紹介だからといって甘く見るつもりは毛頭ない。お前がどこまで目指しているかは知らねぇが、学校で仲良しの奴らとごっこ遊びしているのが限界だろうな。」
「え……」

 あまりに直球すぎて何を言われているのか理解できなかった。リヴァイの言葉一つ一つがエレンの夢を否定しているのだと頭の中が整理つくのに時間を要した。

「低音から高音域までの幅、歌唱力がそれなりにあることだけは認めてやる。だが、それだけだ。お前と同レベルの奴はそこいらにもたくさんいるからな。プロになるのは無理だ。」
「それじゃダメなんです!」

 バンっと机を勢いよく叩きつける音。エレンはたまらず身を乗り出して叫んでいた。リヴァイは少しも表情を変えることなく、止めの一言をエレンに突き付けた。

「お前の歌には心を揺さぶられるものは何もない。」

 心臓を鋭いもので貫かれたような気分だ。いつかはオーディションを受けるつもりではいたが、初めてその世界のプロに自分の歌を聴かせ、否定されたことにエレンのショックは大きかった。
 だがここで退くわけにはいかない。エレンは握る拳を震わせながらいまにも泣き出しそうな顔を真っ直ぐに上げた。

「それでもオレ……いつかはステージに立ちたいんです。昔から憧れていたNoNameのように………」
「てめぇみたいなガキが何で十年も前に引退したロックバンドに憧れてやがる?」
「最初は母が好きだったことが影響してたんですが、テレビで見たNoNameの真似事をしていたことだけは覚えています。オレにとっては昔からの目標なんです。」
「目標か……てめぇが追いかけているのはただの幻だ。」
「幻……一体どういうことですか?」
「この世界は綺麗ごとばかりじゃねぇんだよ。ステージに立つことができるのはほんの一握りの奴らだけだ。それもすぐに人気が無くなれば否応なしに蹴落とされてしまう。」
「それは……NoNameも一緒だって言いたいんですか?」

 椅子から立ち上がったリヴァイが一歩一歩近づいてくる。

「てめぇが生き残るためならどんな汚い手段でも遠慮なく使うのがこの世界だ。スポーツみたいに才能や努力で評価されるのとは訳が違う。」
「汚い手段って……どういうことですか?」

 リヴァイの言葉の一つ一つが重くのしかかる。呑み込まれないように堪えるエレンの目の前にリヴァイが立ちはだかっていた。ゾクリと悪寒が走り身の危険を感じた。

「こういうことだ。」

 いきなり手首を掴まれたかと思うと強い力で引っ張られる。驚くより早くエレンの体はバランスを崩し、すぐ横にあったソファへと背中から倒れこんでしまった。

「な、何をするんですか!」

 起き上がろうとしたが上から覆い被さってきたエレンの体を押しつけられてしまう。

「このままだとてめぇは一生かけてもステージに立つことなんざ無理だろうよ。」

 リヴァイが何をしようとしているのかわからない。スッと伸びてきた指先がエレンの首筋から鎖骨をくすぐるようになぞり始める。

「あっ――――」

 くすぐったいのか何なのかわからない、刺激的な感覚にピクンと体が反応してしまう。エレンはキュっと唇を噛みしめながらリヴァイを睨んだ。

「反抗的な目だな……まぁ嫌いじゃねぇが……」

 シャツを一気に捲し上げられエレンの素肌が露わにさせられる。まだ穢れのない、透き通った肌をリヴァイは舌と指で弄り始めた。

「ちょっ、と!何をするんですか?」
「まだわからねぇのか?取引してやるってことだ。」
「と……取引?」
「俺はハンジの野郎にてめぇの面倒を頼まれただけだ。何の見返りもねぇタダ働きはごめんだからな。」

 リヴァイの湿った舌先がエレンの胸の突起を執拗に弄り回す。熱い息も吹きかけられ、体温が一気に上昇していく。

『な、何なんだよ。これ―――』

 体の奥が疼くような感覚がもどかしい。身を捩って逃げようとするが力が思うように入らず、まるで麻酔でもかけられているかのようだった。

「俺がお前をステージに立たせてやる対価を体で払え。」
「―――――は?」

 いま自分がものすごく間抜けな顔をしていただろうというのは容易に想像がつく。一方のリヴァイは相変わらずの表情のままだ。

「言葉のとおりだ。お前の望みを俺が叶えてやってもいい。その代わりお前は俺に体を差し出せ。」
「……体を差し出すって………まさか……」
「そのまさかだ。」

 リヴァイは手際よくエレンが身に纏っているものを引き剥がしていく。 本意とは裏腹に敏感に感じてしまっている体は下半身に熱が溜まり始めているのが目に見えてわかってしまう。エレンの羞恥心のゲージは限界まで急上昇した。

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!何でいきなりそうなるんですか?別にあなたに教わらなくてもオーディション受けますから!」
「はっ……言っただろう?いまのてめぇじゃ一生ステージに立つことは無理だと。」
「そんなのやってみないとわからないじゃないですか!」
「……俺が指摘したことに自覚がねぇとは言わせねぇぞ。」

 心を揺さぶられるものがない――それはエレン自身が一番よくわかっていることだった。NoNameのDVDを何度も何度も見て練習したおかげである程度の音域でもそつなく歌いこなせるようになった。だがコピーできるのはそこまで。あの観客が引きつけられ一体になって沸き立つような領域にはどんなに足掻いても到底届かないのだということを薄々感じていた。

「それに、お前が目標にしているNoNameというまったくの無名のバンドがそう簡単にデビューできたわけじゃねぇ。いまのお前みたいにプロデューサーあたりに体でも売って……」

 パシっ――気がつけば手が勝手に動いていた。リヴァイの左の頬が赤くなるのがエレンの怒りは収まらない。

「NoName……Lのことを悪く言うな!」

 唇が切れてしまったらしく、赤い血が一筋零れ落ちる。リヴァイは自らの手で血を拭うとフッと妖しい笑みを浮かべた。

「躾のしがいがありそうだな………」

 ゾクリとエレンの背中に悪寒が走った。反射的に逃げようとしたが、手首を掴まれ強い力で引き戻されたエレンの体はテーブルの上に張りつけにされた。

「い……いい加減にしてください!大声で叫んで人を呼びますよ?」
「残念だったな。ここは俺専用のスタジオなんだ。つまりここの鍵は俺しか持っていない……そういうことだ。」

 リヴァイは胸ポケットからこのスタジオのものと思われるカードキーを取り出し、エレンにわざと見せつける。リヴァイの嗜虐的ともとれる瞳に釘づけにされてしまう。ここから逃げ出す手段を断たれ、剥き出しにされた雄の匂いが絶対絶命のピンチに陥ったエレンの鼻をくすぐり、感覚が麻痺してきた。

「やっ―――」

 リヴァイの影が覆いかぶさると、呆気なく唇を塞がれてしまう。生まれて初めてのキス。強引にも押しつけられた唇は予想よりも柔らかさを伴っていてどうにも戸惑ってしまう。
 やがて隙間から熱い舌が這いずり出てきて、固く閉じられたエレンの合わせ目をなぞってくる。頑なに拒んでいたが、焦れたように突かれてしまい、僅かに緩んだ隙を狙って差し込まれた舌で咥内を乱暴に掻き回された。

「ふっ、んんんんっ――――」

 まだ十六歳になったばかりのエレンには想像したことさえない深いキスにクラクラと目が回りそうだ。紅茶のような味に煙草の苦さが混じり、本能的な恐怖とは裏腹に自分では説明のつけられない甘美なモノがエレンを支配していく。クチュクチュとした水音がやたらと耳につくと、無防備になった舌にいきなり歯を立てられ、戦慄が走った。

「んんんっ、んんん!」

 リヴァイのキスの味に鉄のような味が混じり、痛みとともに血が滲み出したところから新たな熱が侵食するように広がってくる。恐怖は遠のき、理解し難い矛盾した感覚にエレンは体を震わせた。
 痛みと甘さを伴うリヴァイのキスに頭も体も麻痺していき、ようやく唇が解放される頃には抵抗力すら奪い去っていった。

『男の人に感じてしまうなんて……オレおかしくなったのかな……』

 キスさえ初めてだったエレンに性経験があるわけがない。でも想像どおりであるならエレンはリヴァイに犯されてしまう。以前ジャンやコニーたちがおもしろおかしく話していたのを耳にしていたので、男同士でもセックスができることぐらいは知識程度に知ってはいたが、自分には関係ないと思っていた。それなのに――

「ひゃっ――――」

 思わず声を上げてしまう。リヴァイの指がくすぐるようにエレンの腹を滑り上がり、さっきからやけに敏感に反応し始めている胸の先端を弾いた。
 自分の胸などこれまで意識などしたことないというのに、リヴァイの指に押しつぶされたり、捏ね回されたりして言いようもない震えが走るエレンは息を乱しながら身を捩った。

「随分と感じやすい胸だな……」

 リヴァイは声を押し殺しているエレンの反応を楽しむように、突起を弄り回した。指だけでなく唇も押し当てられ、エレンの体はさっきから無意識に跳ね上がっていた。

「もぅっ…………やめっ……」

 これ以上リヴァイに押し入られると取り返しのつかないことになる。その証として独特の熱を帯び始めていた下半身がドクリと脈打ち始めていたのだ。
 リヴァイに気づかれる前に本気で止めさせなければと思っていたのに、体は理性と相反してしまっていてもはや後の祭りだった。伸ばされたリヴァイの手が腹につくほど剃り返り、先端から透明な蜜を零し始めているエレンの昂ぶりを包み込んだ。

「あっ……んんっ―――」

 まるで女のような喘ぎ声を上げてしまい、エレンは慌てて口を手で抑えた。

「我慢するんじゃねぇよ、もっと声を聞かせろ。」

 熟れた果実のように赤くなった胸の先端を舌先で転がしながら、リヴァイがエレンの昂ぶりをゆっくりと扱き上げていく。

「はっ……あぁっ、あ……んっ―――」

 リヴァイの愛撫で昂ぶった体から力がどんどん抜けていく。上半身と下半身に違う快感が沸き起こり、エレンは背中を仰け反らせた。

「やっ……も、イくっ―――」

 波が頂点まで駆け上がると、いとも簡単にエレンは白い欲望を穿き出した。

「さすがに若いな……」

 エレンの精液にまみれた自らの手をリヴァイはまじまじと見つめる。もうこれで終わりにしてほしい……弛緩した口から唾液が顎へと伝いながら、エレンはリヴァイに懇願した。

「お……願い……もう、これ以上は……」
「ほう……ここまでされてまだ諦めてねぇのか……面白ぇ……この俺がこんなクソガキに煽られるとはな……」

 リヴァイは獲物を求めている自らの欲望をエレンの前にわざと曝け出す。自分のものとは比較にならない、あまりの逞しさに全身の血の気がサーっと引いていった。

「や……嫌だっ、―――」

 絶対にこんなもの入るわけがない。エレンの抵抗の言葉は虚しく空を切る。自分より小柄なリヴァイの強い力で体を押しつけられ身動きが取れなくさせられると、両足を強引に持ち上げられてしまう。
 エレン自身さえも知らない、まだ何者も受け入れたことのない蕾の入口に先端が押し当てられた。

「む、……無理ですっ。入らないですよ、こんなのっ……し、しかもいきなりなんて……!」
「もう少し可愛げがあったら時間をかけて馴らしてやってもよかったんだが……一番最初は痛みが効くだろうからな。」
「あっあぁぁぁぁぁぁぁ―――――!」

 ジワリ、ジワリと蕾を押し開かれていき、全身を襲う激しい圧迫感に息が詰まる。体が二つに引き裂かれるような感覚にエレンは全身を強張らせて竦み上がった。

「あっ、うっ、……い、痛っ……ぁ、……あっ……」

 痛さと苦しさに言葉も息も詰まる。それもそのはず、全然馴らすことのないまま未開の地をリヴァイが強引に押し入っているのだ。 
 天井まで高く上げられた両膝がガクガクと痙攣し、白い肌には冷や汗が浮かぶ。苦痛に歪められがら、それでもなお、エレンはリヴァイを押し退けようとした。

「ほぅ……まだ抵抗しやがるのか。その根性だけは認めてやる。」
「やっ、……め……」
「抵抗しようとすればするほど、俺を煽るだけだぞ?」

 グッと一気に押し込まれる。リヴァイの楔の先端がある個所を擦ると、背筋に電流が駆け抜け、エレンは声にならない声で啼いた。

「ココがイイんだろう?」

 わざと確認するようにリヴァイが執拗に攻め立てる度、頭の中にバチバチと火花が瞬く。再び芯を持った昂ぶりからは押し出されるように蜜を迸らせた。

「や、だ……やめ……そこ、何か……変、だからぁ……!」

 エレンは首を横に振りながら身悶える。腕を回したリヴァイの背中に爪を立てながら沸き起こる高揚感を必死に堪えた。

「嫌だって?イイの間違いだろう?さっきからこんなんに俺を締め付けてきやがって。よく言う……」

 リヴァイがニヤリと口の端を吊り上げながら腰を引く。言葉とは正反対、あれだけ苦しんでいた内壁の襞が寂しがるように蠕動したかと思うと、今度は一気に根元まで押し込まれた。

「あぁぁぁっ――――」

 反動で浮いた両腰を掴まれ、深く揺さぶられる。エレンを抉るリヴァイの灼熱の楔に中からドロドロに溶かされてしまいそうだ。急速に高まる別の熱の塊がエレンの中で大きくなっていく。

「あっ、あぁっ……んんん―――」

 息をつく暇もない、激しい抽挿にエレンはもはや抵抗する気力を失い、快楽の海に溺れていた。こんなこと、おかしいと思いながらも奥を貫かれる悦楽はエレンにとって未知の領域で、痛みではない、別のモノが生まれようとしていた。

「すげぇなお前……俺も男とヤるは初めてだが、悦すぎだ。」

 さすがのリヴァイも最初よりは余裕が無くなっているようだった。息を僅かに乱しながら額に汗を滴らせる男の顔に、ゾクリとしながらも胸がキュンと高鳴った。

「あぁっ、もぅ……また、…イきそう……!」
「構わない、イっちまえ。」

 一段と激しい突き上げにたまらずエレンもリヴァイに腰を押し付け、甘く叫びながら絶頂を迎える。擦り上げられた内壁が痙攣し、咥えこんだリヴァイの熱の楔をキツく締め上げた。
 そこから先のことは自分でもよく覚えていない。暗闇の底から意識を浮上させ、瞼を開けると白い天井が目に飛び込んできた。

「オレ………」

 あのまま意識を失っていたエレンはソファに寝かされていたようだ。腰に激痛が走るのを感じながらエレンが上半身を起こすと、何食わぬ顔でリヴァイが向かいのソファに座っていた。

「やっと起きたか。」

 エレンの脳裏には次々と記憶が蘇ってきた。体のあらゆるところの痛みはあれが夢ではなかったことを告げてくれている。
 自分は目の前にいるこの男に女のような扱いをされたあげく犯されたのだ。ふつふつとした怒りが沸き起こってきた。

「ひ、人を無理矢理強姦しておいて、よく平然としていられますね!」
「言っただろう?取引だと。お前は夢を叶えるための対価を払っただけだ。ここは憧れや努力で簡単に叶うおめでたい世界じゃねぇんだよ。」
「くっ…………」

 言い返せない自分が悔しい。もっと自分に才能とセンスさえあればこんな仕打ちに合うこともなかったのに―――
 無言のまま衣服を整えたエレンはリヴァイに背を向け、部屋を出ていこうとした。

「この先、どうするかはお前次第だ。」

 リヴァイの言葉に足を止まる。言いように振り回されたエレンは怒りを爆発させた。

「オレには才能がないってさっき言ってたじゃないですか!」」
「普通ならな。だが、俺だったらお前をデビュー、いやこの業界のトップにしてやることだって不可能じゃねぇ。」
「ハッ……とんだ自信家ですね。」
「俺は嘘言わねぇよ。もちろん、デビューしたいというお前の気持ちが本気だったらの話だがな。」

 これ以上話をしても埒が明かない。もう二度と会うこともないであろう男の顔を睨みつけた。

「オレはあなたなんかに頼らない。自分の力でステージに立って見せる。」

 悔しいがいまは精一杯の強がりでしか言い返せない。エレンはリヴァイを置いてそのままスタジオを飛び出していった。


「リヴァイ、エレンに随分嫌われるようなことしたんでしょ?さっき鬼の形相して出て行ったのを見たよ。」
「フン、甘っちょろい夢を追いかけていやがるから現実を教えてやっただけのことだ。それに……どうせ奴は俺の元に戻ってくる。」

 ハンジはやれやれという感じで肩を竦めた。

「あんなに可愛い子に憧れられてうれしいクセに、まったく素直じゃないんだから。こんな酷くてヒネくれた奴がずっと憧れていたLだとわかったら……エレン、ショックだろうなぁ………」

 リヴァイは知るかと言って、好みの紅茶を一口啜った。
 リヴァイがエレンの体に刻んだ痕とLへの憧れがある以上、エレンは必ず戻ってくる。今度はどんな顔して目の前に現れるのか楽しみだとリヴァイは胸の内でほくそ笑んだ。

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